岡山県 高梁市 成羽町にある小泉鉱山の歴史は古く、809年に遡る。1888年〜1918年までは、三菱の経営下にて採掘されていたが、1954年からは吉岡鉱業に経営が移り、吉岡鉱山の支山として稼行されていた。銅、鉛、亜鉛に富んだ鉱床で、硫砒鉄鉱も多産するため、周辺の露頭では、銅、鉛、亜鉛の砒酸塩、硫酸塩などの二次鉱物が観察できる。近年の散策で、稀産の砒酸塩鉱物、ベイルドン石の露頭がみつかり話題になった。その他の露頭からは、閃亜鉛鉱、方鉛鉱などに共ない、青鉛鉱、ミメット鉱、白鉛鉱なども産出している。小規模の開発だったと記録されているが、大規模なズリが今も現地に残されている。ただし、その多くのズリは精錬滓で、めぼしい鉱物の採集はあまり期待できないが、周辺を探索すると、硫砒鉄鉱や、それに共なう二次鉱物が採集できる小規模なズリも残されている。
Bayldonite:ベイルドン石
ベイルドン石は、明るい緑色の微小な球状集合体で産出する。母岩上にモコモコと積み重なっているリッチな標本。(39mmx25mm x15mm) 小泉鉱山のズリの一部。このようなズリが何ケ所もあり、小規模な開発というのが信じられない規模だ。大量の精錬滓が見られる。
ベイルドン石 : 27mmx15mm x11mm
左の標本のズーム写真
Bayldonite after Pyromorphite:ベイルドン石(緑鉛鉱-仮晶)
ここで採集できるベイルドン石の中には、ルーペで観察すると、緑鉛鉱の仮晶をなすものがある。ルーズな六角柱状結晶が観察できる。
61mm x 46mm x 20mm
実体顕微鏡下での拡大写真 (x20)
実体顕微鏡下での拡大写真 (x20)

Bayldonite with Mimetite:ベイルドン石/ミメット鉱

ベイルドン石の球状集合体に、微小なミメット鉱、菱亜鉛鉱を共なうもの。
52mm x 44mm x 25mm
上の標本のズーム写真。

実体顕微鏡下(x20)で観察すると、微小なミメット鉱の結晶集合体を見る事ができる。

Mimetite:ミメット鉱

31mm x 30mm x 14mm

ベイルドン石などの砒酸塩の付いた、焼けた鉱石の空隙には、下の写真のような、無色のミメット鉱が生成されている事がある。
実体顕微鏡下での撮影 (x20)

実体顕微鏡下での撮影 (x20)

Olivenite:オリーブ銅鉱
ベイルドン石より、やや暗い緑の微小な粒状、球状集合体で産出する。
(左)⇔28mm x 22mm x 12mm

⇔21mm x 11mm x 8mm

左上の標本のズーム写真。
上の標本のズーム写真。
Linarite : 青鉛鉱
この青鉛鉱は、閃亜鉛鉱、方鉛鉱などの硫化物を含んだ露頭から直接採集したもの。ここではズリから採集したものとは違うタイプの、ルーズな黄色い結晶をなす、ミメット鉱も確認できる。
⇔81mm x 60mm x 33mm
⇔55mm
実体顕微鏡下で撮影したもの(x20)
上の青鉛鉱と同じ露頭から採集したミメット鉱
⇔43mm x 38mm x 25mm
Aurichalcite:水亜鉛銅鉱
特徴的な錦糸光沢をもつ、水色の鱗片状結晶集合体。その他、孔雀石などの炭酸塩鉱物は、あまり見られない。
⇔31mm x 17mm x 10mm
実体顕微鏡下での撮影 (x20)
Hydrozincite : 水亜鉛土
こちらも炭酸塩鉱物の水亜鉛土。紫外線により蛍光を発する。白色脈部分。
⇔26mm x 17mm x 14mm
紫外線により青白く蛍光する。
Arsenopyrite:硫砒鉄鉱
45mm x 40mm x 20mm
左の標本のズーム写真。
Galena:方鉛鉱
⇔45mm x 44mm x 25mm
左の標本のズーム写真。
参考資料
三菱鉱業社史(昭51.6.1)
日本鉱業誌 I-B [銅、鉛、亜鉛] 地質調査所
岡山県 鉱工業 要覧(1952)
参考資料をご提供いただきましたY.K氏と、一部の標本をご提供下さったA.T氏に心よりお礼申し上げます。