瀬戸内海に浮かぶ小さな島、広島県 生口島は、現在では『しまなみ街道』が開通しており、大変便利になりました。瀬戸田町には、気成鉱床中のタングステンを採掘していた瀬戸田鉱山がありました。そのすぐ近くには、写真のような鉱脈の酸化帯があり、巨大な露頭をなしていて、多種の珍しい砒酸塩の二次鉱物が産出しています。1980年代に入ってから、瀬戸田鉱山を訪れた青年が偶然見つけたという、マニアには大変ありがたい鉱物産地で、斜開銅鉱、オリーブ銅鉱、コーンウォール石など、美しい砒酸塩の二次鉱物が採集されています。今年の夏 (2005.8)、岡山県を中心とした採集旅行に出かけた折り、立ち寄る事ができたので、現在でも豊富にある二次鉱物の近況をここに報告したいと思います。

Clinoclase : 斜開銅鉱
砒酸塩鉱物の宝庫とも言える『瀬戸田』から産出する二次鉱物の代表格、斜開銅鉱です。銅の砒酸塩で、特徴的なピーコック・ブルーをした印象的な美しい色を持っています。中には球果を成すものもあり、断面を観察すると、放射状集合体であるのを見る事ができます。
←40mm→
←35mm→
放射状集合体をなす斜開銅鉱。
放射状集合体をなす斜開銅鉱。
微結晶集合体
微結晶集合体
60mm x 41mm x 35mm
実体顕微鏡下での撮影(x20)
Clinoclase with Olivenite : 斜開銅鉱 /オリーブ銅鉱
銅の砒酸塩鉱物、オリーブ銅鉱を共なった斜開銅鉱です。美しいピーコック・ブルーの微小な結晶集合体の隙間に、淡緑色の錦糸光沢を持つ、オリーブ銅鉱の結晶が付いています。瀬戸田では、下に掲載したようなも毛状のものが多いようですが、この標本は色も良好で、小さいながらもオリーブ銅鉱らしい立派な結晶が見られます。
50mm x 42mm x 19mm
実体顕微鏡下での撮影(x20)
斜開銅鉱に共なうオリーブ銅鉱。
母岩の裏側にも単独でオリーブ銅鉱が付いている。
実体顕微鏡下での撮影(x20)
実体顕微鏡下での撮影(x20)
Olivenite : オリーブ銅鉱
晶洞中に産出した毛状のオリーブ銅鉱です。無色〜淡緑色をした錦糸光沢の結晶集合体が、晶洞内にびっしりと付いています。
←25mm→
実体顕微鏡下での撮影(x20)
実体顕微鏡下での撮影(x20)
Cornwallite with Chrysocolla : コーンウォール石(クリソコラを共なう)
鮮緑色をした銅の砒酸塩鉱物、コーンウォール石です。鮮青色のクリソコラ集合体中に、微小ながら大変美しい球果状で産出し、時には、孔雀石、オリーブ銅鉱などを共なっているものも見られます。独特の透明感と質感があり、慣れると比較的簡単に区別する事ができます。
43mm x 24mm x 23mm
クリソコラの球状集合体の隙間などに、透明感のある鮮緑色のコーンウォール石が見られます。中にはコーンウォール石が下になり、その上にクリソコラが被っているものもあります。微小ですが、本場、英国産にもひけを取らない美しい外観を見せてくれます。
実体顕微鏡下での撮影(x20)クリソコラ上
実体顕微鏡下での撮影(x20)クリソコラ上
Agardite-(Y) : アガード石
希土類元素のイットリウムを含有する銅の含水砒酸塩鉱物。明るい緑色をした皮膜状〜葡萄状で産出します。
80mm x 54mm x 30mm
←45mm→
←25mm→
Parnauite : パルノー石
銅の砒酸塩鉱物で、硫酸基を合わせ持つ珍しい二次鉱物、パルノー石です。平面的に結晶が集合し、他の二次鉱物を共ない、母岩に張り付いたように産出します。静岡県の河津鉱山からも産出が報告されています。
59mm x 41mm x 22mm
実体顕微鏡下での撮影(x20)
実体顕微鏡下での撮影(x20)
Pharmacosiderite : 毒鉄鉱
毒鉄鉱は、カリウム、鉄に結晶水を含む砒酸塩鉱物で、多くの場合は非常に微小な四角い結晶で産出します。しかし鑑賞に耐える良標本は稀で、海外産のものでも優れた品は多くありません。この標本は同行した鉱物マニアの平氏が採集したもので、透明感のある深いグリーン色をした、非常に光輝の強い良標本となっています。7mm程の晶洞内に1、2mm程の結晶がいくつも集合しているもので、毒鉄鉱としては大変美しいものだと思います。残念ながら私は採集する事ができず、標本をお借りして掲載する事にしました。(平氏には改めて御礼申し上げます。)
小さな晶洞中の毒鉄鉱。(64mm x 43mm x 13mm)
晶洞のズーム(←23mm→)
実体顕微鏡下での撮影(x20)
実体顕微鏡下での撮影(x20)